オフショア法人でも日本の消費税で課税対象となる取引とは?
日本でよく言われるオフショア法人とは、簡単に言えば、自国の外にある国・地域に設立する法人のことです。日本では「海外法人」とも呼ばれます。オフショア法人を設立する目的は様々ですが、主に以下の3つが挙げられます。まず消費税などを節税することです。多くのオフショア法人は、タックスヘイブンと呼ばれる法人税や所得税などの税率が非常に低い、または免税措置を受けられる国や地域で設立され、節税対策として利用されます。次に、海外市場への進出や、国際的なビジネス展開を容易にするため、そして資産の保護や、相続対策のために、オフショア法人を設立するケースがあります。
これらの目的を達成するために、タックスヘイブンで設立されたオフショア法人には次の特徴があります。まず、設立手続きが他の国や地域に比べて簡素化されており、その費用も抑えられますし消費税もかからない。また、規制が緩やかで、会社の構造、資本金、取締役と株主の数など、多くの面で柔軟性が高く、設立時の負担が軽くなりますし、他と比べて、法人の継続に必要な要件が少なく、長期的な運営がしやすい環境です。そして、会社の情報公開が制限されていて、金融プライバシーを強化する法律や規制を持っています。これらの特徴により、オフショア法人は、様々な目的で活用できる便利なツールとして、多くの企業から注目されています。
このようにメリットの多いオフショア法人ですが、デメリットも少なからず存在します。例えば、日本では、タックスヘイブンに関する特別税制があります。具体的には、タックスヘイブンに所在する子会社の利益が、日本の親会社に配当されたと見なされ、それに対して日本で税金が課される制度です。これは消費税においてもです。この制度により、日本に住む人々がオフショア法人を利用しても、確実に節税できるとは言えません。なぜなら、タックスヘイブン対策税制の対象となるのは、ペーパーカンパニーなどの特定外国関係会社等や、対象外国関係会社などに該当する場合であり、また、その株式の持分でも、課税されない場合、される場合があります。このことからも、税制を理解することの難しさを物語っています。
これは消費税についても同様に、理解、判断が難しいと言えます。まず、消費税が課される取引は、次の4つの要件すべてに該当する取引とされています。国内取引、事業者が事業としておこなう取引、対価をともなう取引、そして資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供です。つまり、これらの要件をひとつでも満たさない場合は、消費税課税対象から外れる不課税取引となります。例えば、開発業務、これは役務の提供であると言えますが、これが国外でおこなわれた場合は、国内取引に該当しないとみなされるため、不課税取引に該当し、消費税は課されません。ただし、開発した成果物を国内で受け取った場合は、国内での資産の譲渡に該当し、消費税の課税対象とみなされます。
また、不課税と非課税の概念があり、これが消費税課税の理解をさらに難しくさせています。まず、国内の事業者が事業としておこなう取引や対価をともなう取引、資産の譲渡や貸付、役務の提供の要件に当たらない取引は消費税が課税されない不課税取引となります。オフショア法人が行う取引は、消費税が課される国内の取引に該当しないことが殆どであり、消費税は不課税の場合が多いと言えます。また、資産の譲渡などで、課税の要件に該当する取引であっても、その一部は消費税が課されない取引が存在し、その場合は非課税取引と呼ばれます。これには、社会的に配慮されるべき取引であったり、課税に馴染まない取引が該当します。なぜ、不課税と非課税に分かれるのかといえば、それは課税売上割合を計算する際に、分けて計算されるからです。課税売上割合の計算式は、課税売上割合=課税売上高/課税売上高+非課税売上高となりますが、非課税取引は分母のみに算入し、不課税取引は分母にも分子にも算入しません。この違いが、あるために不課税と非課税に分けて考える必要があるのです。
これだけみても、消費税課税の考え方は非常に複雑です。そのためにも、やはり、税務や法務の専門家の存在は無視できません。これらのサポートが無いと遵守するためのコストは膨大なものとなります。また、課税方式は年々変更されます。オフショア法人の設立や継続に関するサポートをしている専門家は、税制や法律などの変化に敏感であり、頼りになる存在だと言えます。