ノミニーとは?オフショア法人との関係と注意点
ノミニーとは、英語で「nominee」と表記し、「名義人」または「代理人」という意味を持つ言葉です。日本語では「名義貸し」や「代理人登記」とも呼ばれます。ノミニー制度とは、法人の役員や株主などの名義を第三者に登記できる制度を指します。オフショア法人は元々その法人情報が非公開のため、この制度は必要ないと考えられがちですが、ノミニー制度を利用しその秘匿性を強固にすることで、実際のオーナーは表に出ることなく、会社を運営することができます。このノミニー制度は、オフショア法人設立においてよく利用されます。オフショア法人とは、租税回避目的などで海外に設立された法人のことを指し、オフショア法人は、法人税などの税負担を軽減を目的にタックスヘイブンと呼ばれる租税優遇措置のある国や地域に設立されます。
ノミニー制度には、大きく分けて法人ノミニーと個人ノミニーの2つ種類があります。法人ノミニーは、専門のノミニーサービス会社がノミニー役員やノミニー株主を提供します。個人ノミニーは、実際のオーナーの知り合いなどがノミニー役員やノミニー株主となる場合があります。そして、ノミニー制度を利用する場合、ノミニーと実際のオーナーとの間で契約書を締結することが重要であり、契約書で次のようなことを確認しておく必要があります。まず、ノミニーが実際のオーナーの指示に従って行動すること、次に、実際のオーナーが会社の所有権と利益を享受すること、そして、ノミニーと実際のオーナーの責任の分担、これらは契約書にて最低限押さえておく必要があります。
オフショア法人にノミニー制度を利用すると、実際のオーナーの情報が公開されないため、プライバシーを保護することができ、実際のオーナーが匿名で会社を運営することができます。ノミニー制度は、設立時や更新時に別途費用がかかりますが、オフショア法人設立において、プライバシー保護や匿名性などのメリットを提供します。これは、企業買収や事業承継などの際に匿名性を保ちたい場合を含め、プライバシー保護や匿名性を重視する企業にとって非常に大きなメリットとなります。また、タックスヘイブンを利用することで、法人税などの税負担を軽減することができます。その一方、ノミニー制度はタックスヘイブンの多くで合法的に認められていますが、場合によっては法的なリスクを伴う場合があります。また、そもそもタックスヘイブンでは企業情報の開示義務がない場合が多く、ノミニーの活用は不要と考えますが、プライバシー保護を徹底してノミニーを活用される方が多いのも現状です。これが、企業活動の透明性が欠如していると見なされる可能性があり、そのためマネーロンダリングや脱税などの違法行為と結びつけられることが多いため、企業が違法行為に関与しているという疑念を持たれる可能性があります。そのため、reputational リスクを伴う場合があります。
また、国際的な租税回避対策が強化されています。租税回避とは、課税されるべき取引について税法で規制されていない方法を選択し、通常では行われない、あるいは取引が成立しないような取引を、法律規制されていない、法の抜け穴を突くことで、課税対象になる取引を減らす為だけに行われる行為です。日本でも、タックスヘイブン特別税制がその定義を拡大し運用されています。ノミニー制度もその影響を受けており、ノミニー制度の利用条件が厳格化される可能性もあります。
オフショア法人設立を検討し、ノミニー契約を利用したい場合、法人設立時の最初の段階でノミニー利用を伝えることによって、株主や役員を第三者に設定することができます。ですので、ノミニー制度を利用する場合は、最新の情報に注意し、メリットとデメリットを慎重に検討することが重要です。また、ノミニーが会社の実権を奪い、実際のオーナーから利益を搾取したり、契約内容を守らず、損害を与えたりすることで、ノミニーとの間で紛争が発生する可能性があります。ですが、ノミニー制度は本来のプライバシー保護という目的で利用すれば、良い制度であることは間違いありません。専門家はノミニーにも精通しており、リスクを取り除いた提案をしてくれますので、これらリスクを防ぐためにも、設立時からコンサルや設立代行業者などの専門家に相談した方がいいでしょう。